# 未来探訪

「なぁ、未来を、探してみないか?」
まるで宗教の勧誘でもするかのような口調で、S君は僕に言った。
ここはお台場にある某ファミレス。窓の外には、フジテレビの建物がそびえている。
「未来?そんなの探してもみつからねぇって」
「まぁいいじゃん、俺だってそう簡単に見つかるとか思ってないよ。
 まぁ見つけたらラッキー、ぐらいで」
「あー?まぁ、今日は休日で暇だしな。いいや、一日だけ付き合ってやるよ」
「ありがとう!んじゃ、さっそく行こうぜ。善は急げだ!」
この行動が"善"かどうかはともかく、S君は残ったジュースを飲み干して店から駆け出した。
僕も慌てて(もちろん支払いを済ませてから)、彼の後を追って外に出た。

「どこを探す?」
「うーん、とりあえずこの辺を探しまくろうぜ。なんなら誰かに聞いてもいいな」
相変わらず無計画なやつだ。こんな様子で未来なんて見つけられる筈が無い。
まぁいいか、傍観者に徹すことにしよう。
こんなことに必死になるS君を観察できる機会もめったに無いしな。
「・・・を頼む。いいな、っておい。聞いてんのか!?」
「え?ああ、ごめん。聞いてなかった」
「だから、二手に分かれようぜって言ってんの。俺がとりあえず建物の中を探すから、
 お前は一階と外周りを頼む、いいな」
「あの、建物って・・・?」
「テレビ局に決まってるだろ。ほら、さっさと行くぞ!」
確かにテレビには夢が詰まっているなんてのはよく聞くが、テレビ局に僕らの未来なんてあるのだろうか。疑問は尽きないが、とりあえず従うほか無いようだ。S君はもう歩き出している。
それにしても、二手に分かれるなんて。せっかく観察できるチャンスが・・・
ん、まぁいいや。その分サボってもバレないってことだ。さっきのファミレスにでも行っておこう。
僕はS君の姿がビルに消えるのを見届けてから、反対方向へと歩き出した。

あれから、2時間。辺りもそろそろ暗くなってきた。S君はまだしつこく探しているのか、
この2時間まったく連絡がない。もちろん、僕からも連絡はしていないが。
それにしてもそろそろ一人ではファミレスに居づらくなってきた。
外に出ようと"ドリンクバー 1"としか書かれていない伝票に手を伸ばしたとき、電話が鳴った。
S君からだ。
「おい、やっと見つけたぞ!お前今どこにいる?とにかくフジテレビの入口に来い!
 もうすぐそっから出るから!いいな!」
未来って・・・動くのか?出るって・・・
そう思ったが、とりあえずS君が何を見つけて未来だって言ってるのか気になったので、
僕は素直に向かうことにした。
そして入り口にたどり着いたとき、ふたたびS君から着信。
「おい、いるか!?今出るぞ、いいな!」
僕は顔を上げて入り口に目をやった。するとそこには、携帯片手に興奮した様子のS君がいた。
そして、僕も、見つけた。S君の探していた、"未来"を。


ファンの歓声の嵐をくぐりぬけて、森山未来が車に消えた。
written by 土門



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