出会いは、高校のときだった。
1年生の同じクラスに、彼と彼女はいた。 初めはもちろん、お互いのことを意識したり、話をしたりということはなかった。 ただのクラスメイト、街中で顔を合わせても「よぉ」ぐらいで終わる関係だった。 そして、その年は何事もなく終わっていった。 二人の関係に異変が起きたのは、翌年の9月、文化祭の時期だった。 クラスでやった劇で、彼と彼女はカップルの役を務めた。 くじで決めた配役に、二人はともに拒否感を示した。 ただそれは「こんなやつとやりたくない」というものではなく、「恥ずかしい」という気持ちのほうが大きかった。 お互い、恋心とはいかないまでも、好意は抱きあっていたのだ。 劇は大成功に終わり、打ち上げの席で彼は彼女に言った。 「もう少し、劇の続き、やりたいな」 彼女は何も言わなかったが、その照れた笑顔がOKだと言っていた。 こうして、二人は付き合い始めた。 それから、二人は多くの時をともに過ごした。 修学旅行、受験勉強、卒業式。 高校生のイベントのほとんどを、彼と彼女は二人で駆け抜けた。 そして大学。 同じ大学には入ることはできなかったけれど、隣県同士の大学に入り、授業を抜け出しては幾度も会った。 県境の小さな喫茶店に、幾重もの思い出を重ねた。 そしてあるとき、彼は彼女にこう言った。 「劇は、終りだ。これからは、俺たちの人生だ」 その言葉に、彼女は再び照れた笑顔を見せた。 そして言った。 「3ヶ月よ」 結婚式が盛大に行われ、しばらくして彼女は入院。 大きなお腹を抱えて。 そして、出産。 待ち焦がれていたときを迎え、たはずだが、彼と彼女は一心に泣いた。 流したのは悲しみの涙。 医師の宣告。 「死産です」 わずかの間、二人は立ち直れなかった。 しかし、一年後には再びその病院にいた。 彼女は大きなお腹を抱えて。 そして、運命のとき。 あらゆる神に祈りながら待った彼の元へ、笑顔の彼女と看護士が駆け寄る。 「元気な・・・男の子です」 彼と彼女は再び一心に泣いた。 流したのは喜びの涙。 こうして、俺は生まれた。 ・・・というのは、部分的に嘘です(一番たちが悪い) |
written by 土門 |
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